2026/10/07 13:27

和紙の商品ページを見ていると、その独特の風合いやぬくもりに心が惹かれることがあります。
けれど、「この綺麗な紙は一体どのようにして作られているのだろう?」と、
ふと不思議に思うことはありませんか?
そこで今回は、和紙の原料となる「楮(こうぞ)」を蒸して皮を剥く、
冬の伝統作業「楮かしき」についてご紹介いたします。
小川和紙の産地で実際に体験してきた作業の様子とともに、
和紙が作られる背景にある手仕事の温もりをお伝えできれば幸いです。
◆ 「楮かしき」は、和紙づくりの始まりを告げる冬の作業
「楮(こうぞ)」とは、和紙の主な原料となるクワ科の落葉低木のことです。
この楮の枝を大きな釜で蒸し、あたたかいうちに皮を剥いでいく作業を「楮かしき」と呼びます。
(※「楮かしき」は、和紙の産地である埼玉県小川町ならではの呼び方だそうです)
蒸気があがる工房の中で手早く行われるこの作業は、
厳しい冬の寒さの中で行われる和紙づくりの大切な第一歩でもあります。

↑ 楮を蒸している様子。今回お手伝いした工房では一般的なものとは少し違う設備で蒸していました。
蓋を上からかぶせて蒸す形が一般的だそうです。

↑ 蒸しあがった楮。湯気がもくもくです。
◆ 冷めないうちに手早く剥く、時間との勝負です
蒸し上がったばかりの楮はとても温かいのですが、冷えると皮が固くなって剥きにくくなってしまいます。
そのため、布団などをかぶせて温かい状態をキープしながら、ひとつひとつ手早く作業を進めていきます。

楮の先端をギュッとひねって表面の皮を少し剥がし、それを引っ張ってみると…

不思議なほど「するするーっ」と綺麗に皮が剥がれていきます。
その気持ちよさと楽しさに、思わず夢中になってしまうほどでした。
また、蒸したての楮からは、まるでさつまいものようなほんのり甘い良い香りが漂い、
工房全体をやさしく包み込んでいました。
◆ 一枚の和紙になるのは、木のほんの一部分「皮の繊維」だけです

こうして綺麗に剥ぎ取った皮の層(靱皮繊維)だけが、和紙の原料になります。
木材そのものを細かく粉砕して作る一般的な紙(洋紙)とは異なり、
和紙は「植物の皮の長く強い繊維」をそのまま生かして作られます。
ここからさらに「皮むき(黒皮を取り除く作業)」や「煮熟(しゃじゅく)」など、
いくつもの手作業と長い工程を経て、ようやく私たちが目にする「和紙の原料」ができあがります。
ちなみに、皮を剥いたあとの白い枝(木身)は和紙には使いませんが、
燃えつきが良いため薪として大切に利用されるそうです。
ツルツルとした真っ白な枝はとても美しく、自然の恵みを無駄にしない昔ながらの知恵を感じさせます。

↑ 白くてとても綺麗なので少し分けていただいて、お店に飾ってみました。
◆ 実際に触れて感じた、手仕事の美しさ
実際に作業をお手伝いしてみると、
「和紙って丸太ではなく、こうして一枚ずつ剥がした『木の皮の繊維』からできているんだな」と心から実感しました。
和紙には、寒さの中で丁寧に植物と向き合う職人さんや地域の方々の手がかけられています。
あのしなやかで破れにくい強さや、光を柔らかく通す表情は、
こうした木の皮の長い繊維と、丁寧な手仕事から生まれているのだと改めて気づかされました。
◆ 和紙を手に取るとき、その背景にある物語も楽しんでみてください
オンラインショップで和紙を選ぶとき、
少しだけ和紙作りの背景に思いを馳せてみてください。
ただの「素材」や「道具」としてだけでなく、
自然の恵みと人の温もりを感じられる特別な一枚に思えてくるかもしれません。
和紙の向こう側にあるストーリーや手仕事のぬくもりも、
創作活動とあわせてお楽しみいただけましたら嬉しく思います。
